CASE STUDY
【ハイパーオートメーション事例】業務時間5,500時間を削減──タイの大手金融機関が挑んだ業務改革と顧客満足の両立

タイの大手リテール銀行(一般個人や中小企業を対象とした銀行)であるクルンシー・コンシューマー(Krungsri Consumer)は、デジタルチャネルの高度化と業務効率の両立を目指し、ハイパーオートメーションへの取り組みを本格化させた。サービス品質やスピードへの期待が高まるなかで、手作業による業務の非効率さが課題となっていた同社は、業務プロセス自動化プラットフォーム「Tungsten TotalAgility(タングステン・トータルアジリティ)」とRPAを活用し、業務プロセス全体の自動化と最適化に挑戦。その結果、顧客対応のスピード向上、人的負担の削減、生産性の大幅な改善といった成果を実現している。本記事では、クルンシー・コンシューマーの取り組みを通じて、金融業界における業務変革のヒントを探る。
ハイパーオートメーションとは:https://open.co.jp/hyperautomation/about/
東南アジア有数の消費者金融機関のクルンシー・コンシューマー(Krungsri Consumer)について
クルンシー・コンシューマー(Krungsri Consumer)は、三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社であるタイのアユタヤ銀行(正式名称:Bank of Ayudhya)の消費者金融部門であり、「クルンシー(Krungsri)」はその愛称である。クレジットカード、パーソナルローン、販売金融などのサービスを提供しており、タイ国内最大規模となる900万口座以上を保有する、東南アジアを代表するリテール金融機関の一つである。
「マルチチャネル対応」時代に浮かび上がった業務の限界
近年、金融業界では「いつでも・どこでも」利用できるマルチチャネル対応が当たり前となり、顧客の期待もますます高まっている。クルンシー・コンシューマーでもこうしたニーズに応えようとしていたが、実際にはバックオフィスから顧客対応まで多くの業務が手作業のままで、対応の遅れや業務負荷が課題となっていた。新規顧客の獲得と既存顧客の満足度向上を両立させるためには、業務全体がシームレスにつながるエンドツーエンドのデジタル対応体制の構築が不可欠だった。
全社業務を横断する、自動化のステップ展開
クルンシー・コンシューマーは、RPAと業務プロセス自動化プラットフォーム「Tungsten TotalAgility」を活用し、全社的な業務自動化を推進している。導入初期には全社から400件以上の自動化候補が集まり、その中から優先度の高い24業務を選定。以下のような主要業務が対象となっている:
・資金繰り処理(インターデイ・リクイディティ管理):従来は毎朝45分かかっていた作業が、ロボットによって15分で完了。
・商品申込処理(テレセールス対応):申込処理時間を120秒から9秒に短縮し、テレセールス部門で月間約1,000時間の業務削減を実現。
・顧客対応(コンタクトセンター):問い合わせ対応の一部を自動化し、月間707時間の工数を削減。
・クレジットカードの支払期日変更処理:従来月間150時間かかっていた手作業を30秒で完了可能にし、年間1,800時間の削減とヒューマンエラーの排除を実現。
・インシデント管理業務:処理期間を18営業日から10営業日に短縮し、最終的には年間工数の75%削減が見込まれている。
このように、バックオフィスから顧客対応業務まで、業務領域を問わず自動化を段階的に展開している。
業務プロセスを支えた主な機能
クルンシー・コンシューマーの業務自動化を支えたのは、Tungsten TotalAgilityとRPAの組み合わせによる多機能な仕組みである。導入された主な機能は以下の通り:
・業務プロセスの自動化(BPM):Tungsten TotalAgilityにより、部門をまたぐ一連の業務プロセスを可視化・自動化。
・反復業務の自動処理(RPA):日常的に発生する24の業務に対し、ソフトウェアロボットを適用し作業を効率化。
・AI-OCR・データ処理の自動化:紙・電子フォームの文字認識、情報の自動入力、照合、条件分岐処理を実現。
・申込・問い合わせ業務のワークフロー化:電話対応、申込受付、アカウント作成といった業務をワークフローに統合し、自動化。
これらの技術により、バックオフィスと顧客対応業務の両面で、大幅な効率化と品質向上が図られた。
月間5,500時間を削減、生産性85%向上のインパクト
こうした仕組みによる自動化の取り組みは、明確な成果として現れている。かつて手作業に頼っていた多くの業務が自動化され、月間で5,500時間(フルタイム社員30人分相当)の作業が削減された。対応スピードも大幅に改善され、顧客満足度の向上にも貢献。
現場からは「単純作業から解放されて、本来注力すべき業務に集中できるようになった」という声が多く寄せられており、業務の質と働き方の両面でポジティブな変化が生まれている。
判断業務や顧客接点へ、自動化は次のステージへ
これまでの成果を受けて、クルンシー・コンシューマーでは自動化をさらに広げる取り組みを進めている。現在は、たとえばお客様の返済能力を判断する「与信審査」や、支払いが遅れているお客様への「債権回収」、さらに社内のパソコンやアカウントの申請管理といった、さまざまな業務の自動化に着手している。今後は、口座開設時の手続きや、新規顧客を迎える際の社内準備(オンボーディング)など、よりお客様との接点に近い場面にも自動化を広げていく予定だ。これにより、サービスの質を保ちながら、業務のスピードや正確性をさらに高めることを目指している。
小さな自動化から、全体最適への第一歩を
この取り組みは、手作業に依存した業務が残る日本企業にとっても大きなヒントとなる。重要なのは、判断を伴わない単純作業から段階的に自動化を進め、小さな成功を積み重ねていくこと。さらに、RPA、OCR、ワークフローなど複数の技術を連携させることで、部門をまたいだ業務全体をつなぎ、コスト削減だけでなく、働き方の改善やサービス品質の向上にもつなげることができる。現場に寄り添った設計こそが、成功のカギとなる。
ハイパーオートメーションが描く、業務全体最適化の道筋
クルンシー・コンシューマーの事例は、一部の作業効率化にとどまらず、業務全体を見直し、横断的に最適化していく「ハイパーオートメーション」の実践例である。複数の技術を組み合わせ、現場ごとの業務に最適なかたちで実装することで、業務効率とサービス品質の両立を実現した。このアプローチは、業種や規模を問わず日本企業にも十分に応用可能であり、部分的な改善の先にある「全体最適」へのヒントとなるはずだ。
「自社でも活用できるか知りたい」という方は、ぜひ無料相談をご活用ください。
(https://open.co.jp/hyperautomation/contact/)
ハイパーオートメーションの中核を担う「Tungsten TotalAgility」とは?
Tungsten TotalAgilityは、ハイパーオートメーションを実現するための統合プラットフォームです。紙・PDF・Webフォームなどあらゆる入力データを取り込み、処理・判断・可視化までを一気通貫で実行できるのが最大の特長です。
主な機能は以下のとおりです:
・マルチチャネルキャプチャ:紙・Web・PDFなど、複数の入力チャネルに対応
・AI-OCRとデータ抽出:書類を読み取り、必要な情報を自動で取り出す
・ワークフロー自動化(BPM):部門をまたいだ業務の流れを設計・実行・管理
・ビジネスルールエンジン:条件に応じた処理の自動分岐や判断を実現
・リアルタイム分析・可視化:進捗状況やボトルネックをグラフで見える化
Tungsten TotalAgilityは、RPAやAI、人の判断、外部システムとの連携を含むすべての業務プロセスを「設計→実行→監視→改善」まで一元的に管理でき、分断されていた業務の統合と標準化を可能にします。
これにより、属人化の排除、ミスの削減、業務スピードの向上、そして顧客満足とコスト削減の両立を支援します。
日本国内ではオープン株式会社が、TTAの販売・導入支援・技術サポートを担当しています。導入のご相談や製品活用については、以下よりお気軽にお問い合わせください。
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※本記事は、Tungsten Automationが公開している「Krungsri consumer boosts customer service responsiveness with automation」の事例情報をもとに編集・構成したものです。